―勇者ペルセウスとヘラクレス―


勇者ペルセウスとヘラクレスは、神ゼウスが一方的に浮気(いわゆる横恋慕というやつ)をした人間界の女性に産ませた子供であることが共通しています。 そして2人とも全能の神ゼウスの血を受け継いでいるので、人間離れした勇者になりました。


ペルセウス

アルゴス王が「産まれた孫に王位を奪われる」という神託によりの娘ダナエを幽閉していた塔の中に、黄金の雨に変身して忍び込んだゼウスとの間に産まれた子供がペルセウスです。  産まれた直後から試練の連続でしたが、神やニンフ達の助けを借りて怪物メドゥーサを退治した物語は有名です。  後に運命に導かれペルセウスは祖父のアルゴス王を不慮の事故で死に至らしめてしまいますが、妻アンドロメダと共にミケーネのペルセウス家の祖となり、ヘラクレスに繋がっていきます。

 ペルセウスを表したコインは少ないですが、マケドニアのフィリッポス5世が
 発行したこのコインは、息子で皇太子のペルセウスを勇者ペルセウスに擬して
 表したものと思われます。
 コインはマケドニア式の盾の形をとり、その装飾としてペルセウスを扱っています。
 ペルセウスの向こう側に見える刀はメドゥーサの首を切り落とした名刀ヘパイストス
 の刀でしょう。

 マケドニア王国 フィリッポス5世
 テトラドラクマ銀貨(裏面)


 ゴルゴン(メドゥーサ)の首
 正面向きで表現されるゴルゴンは、なぜか舌を出して表現される
 ことが多いようです。

 ミシア地方 パリオン
 ヘミドラクマ銀貨(裏面)


 ペガサスはペルセウスがメドゥーサの首を切り落とした時、
 飛び散った血によって産まれました。

 コリンティア地方 コリント
 ステーター銀貨



ヘラクレス
ヘラクレスはゼウスとミケーネの女王アルクメネとの間にできた子供で、そのためゼウスの正妻ヘラに憎まれ、死ぬまで色々と苦しめられることとなりました。もっとも死後はヘラとも仲直りをし、オリンポス神の一員に迎えられたということです。 めでたし、めでたし。 それにしてもヘラクレスの12の偉功は有名です。


毒蛇を絞め殺すヘラクレス
  ヘラクレスが本当にゼウスの子供であるか試されるため、
  寝床に毒蛇を投げ込まれたところ、赤子ながら両手で蛇を
  絞め殺してしまい、ゼウスの子である事を証明しました。

  ブルティウム地方 クロトン
  ステーター銀貨(裏面)


ライオンの頭皮を被るヘラクレス
  キタイロン山に棲み、人里を荒らしていたライオンを
  倒しその頭皮を自分の頭飾りとしました。
  以後これがヘラクレスの一番のトレードマークとなりました。

  マケドニア王国 バビロン鋳
  フィリッポス3世
  テトラドラクマ銀貨(表面)


ヘラクレスの持ち物:棍棒
  キタイロン山のライオンを倒す時に、年経た野生のオリーブの木を
  棍棒に仕立てて武器としました。
  この棍棒もヘラクレスのトレードマークとなっています。
  棍棒に付いているボツボツ(枝のあと)が鬼の金棒の突起に似ていますね。

  マケドニア王国 フィリッポス5世
  テトラドラクマ銀貨(裏面)


清め(御祓い)の枝を持つヘラクレス
  イタリア、ブルティウム地方のクロトンは自国の創設者を
  ヘラクレスと信じていました。

  ブルティウム地方 クロトン
  ステーター銀貨(表面)


ワインカップを持つヘラクレス
  左手に棍棒、その下にライオンの皮と弓が見えます。

  ブルティウム地方 クロトン
  ステーター銀貨(裏面)


ライオンと闘うヘラクレス
 キタイロン山のライオンと思われるライオンと
 闘うヘラクレス。
 ルカニア地方 ヘラクレイア
 ジドラクマ銀貨(裏面)


棍棒とライオンの皮を持つヘラクレス

ヘラクレイアのドラクマ銀貨のバリエーション。
上のコインが闘う場面で、これらのコインは戦いの後といったところでしょうか、戦利品を手に誇らし気に見えます。
資料はありませんが国名もヘラクレイアでヘラクレスとの強い関連性を感じます。

ルカニア地方 ヘラクレイア ドラクマ銀貨(裏面)


英雄に成り損なったベレロフォン
コリントの王子ベレロフォンは、故意ではなかったのですが競技中に弟を殺してしまいました。 これを悔い、国を離れナルゴス王のもとに身を寄せました。 するとナルゴス王の王妃に言い寄られてしまいます。 ベレロフォンが邪険にすると、王妃は逆恨んで夫に讒言します。 王妃の言葉を信じた王は、なにも知らないベレロフォンに「彼を殺して欲しい」という暗号文を持たせ、舅である小アジア・リュリア王のもとへと送りました。 リュリア王は自身が手をくださず、怪物キメイラ退治という難題を与えて間接的にベレロフォンを殺そうとたくらみます。 しかしベレロフォンは女神アテネからペガサスを思うままに操れる金のくつわを授かり、普通だったらとても乗りこなせないペガサスに跨がり、見事キマエラを退治してしまいます。 リュリア王はベレロフォンを殺すことを諦め、すべての事情を話して許しを乞い、娘のピロノエ(カッサンドラまたはアルキメネとも言われる)を妻に与えました。 ここ迄は順調に英雄への道を歩んでいましたが、ベレロフォンも人の常で、しだいに驕り高ぶっていきます。 彼は神々の高みに登ろうと、ペガサスに跨がり天上に侵入しようとしました。 ゼウスはこれに激怒し、虻を遣わしてペガサスを刺させます。 ペガサスは驚き跳ね回り、ベレロフォンはついに振り落とされ片足を失い、放浪の身となりました。 ベレロフォンはいつしか伝説から消え、ついに英雄になり損ねてしましました。

キマエラと戦うベレロフォン


女神・アテネからペガサスを思うままに操れる金のくつわを授かり、ペガサスに跨がり上空から怪獣キマエラと戦うベレロフォン。
円谷プロも真っ青のスペクタクルを1枚のコインの表裏に表わしたコインで、通常のステーター銀貨に比べ遥かに希少な存在です。
思えば、この時がベレロフォンの絶頂期でした。

コリンティア地方 コリント
1/2ステーター銀貨
表:ペガサスに跨がり槍を構えるベレロフォン
裏:身構えるキマエラ
(他の掲載コインより拡大率は高くなっています)





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