―トピックス(2005)―
月いちのペースで小さな話題を掲載します。
トロフィーの起源
2005/12/23
シラクサ・アガトクレスのテトラドラクマ銀貨の裏面に見られる、柱に飾られた甲冑が現在のトロフィーの起源のようです。戦利品である敵の鎧・兜・盾・臑当を柱に飾り付け、勝利の女神ニケが右手にハンマーを持って兜に銘文を刻もうとしているようです。戦勝時に行った儀式を表しているのでしょうか。
正面向きのペガサス
2005/11/12
ラリッサのニンフやロードスのアポロなど、正面から描いたコインは少なからずありますが、ペガサスを正面からとらえたものは初めて見ました。小額コインは目にする機会が少ないので、それだけ新しい発見が多いように思います。
サテュロスの頭像のコイン
2005/10/15
2003/7に腕だるさんより”サテュロスをモチーフした銀貨で頭像に近い図柄のものは存在するのでしょうか?小林様のHPを拝見すると、全身像に近いものはありました。サテュロスは下半身に特徴があるのでこうなって しまうのでしょうか。”とご質問がありました。 その時は銀貨は無いが銅貨ならあるかもしれないとご返事をしました。 その後豆粒の様なコインを入手しましたが、そこにサテュロスの頭部が表されているのを発見しました。カタログをよく見ると写真は無いものの、確かに表面はサテュロスの頭部と記載されていました(Seaby/Sear 1756)。 ちなみに現在、私の中では最小です。
(貨幣単位のトリテモリオンのテモリオンがどのような換算値かは不明です)
現代まで影響を与え続ける古代ギリシャのデザイン2
2005/09/17
このナポレオンメダルも古代ギリシャコインを手本にしているようです。牛のスタイルは改良が進んだせいか姿、形(特に乳)が異なっているのが興味深いところです。
犂(牛馬に引かせ田畑を耕す農具)の今昔
2005/08/19
左のコインは紀元前300〜400年頃のコリントのステーター銀貨で、右のコインは1966年のイタリアのコインです。2つのコインには2000年以上の年代差がありますが、双方とも犂がモチーフになっているので並べてみました。こうして見るとその形はほとんど同じで、はるか昔に完成されていたことに驚きを感じます。最近ではトラクターにとって代られてきていますが、
まだまだ現役で活躍しているところもあります。
クレオパトラと楊貴妃
2005/07/10
美人の代名詞で西の横綱といえば『クレオパトラ』ですが、彼女の姿は彼女が発行したコインで窺う事ができます。しかし、プトレマイオス朝最後の混乱期に発行されたせいか、程度の良い物が極端に少なく写真のサンプル程度でもかなり良い方です。そもそも、クレオパトラが美人だったという伝説は『シーザー』や『アントニー』を次々にたぶらかした?ので、さぞや美貌の持ち主だったという後の推測によるところが大きいと思われます。しかし彼等を捕えたのは彼女の持つ教養、機知、莫大な富といったものだったのでしょう。
片や東の横綱は『楊貴妃』ですが、彼女とコインを結ぶ伝説があります。それは、、、鋳銭場を視察に訪れた楊貴妃が、鋳造途中の金型に触れた時に彼女の爪跡が残ったというもので、『楊貴妃の爪跡』とされています。 実際はミントマークか何かのたぐいだと思いますが、夢のある伝説です。なお開元通寶は中国の唐が発行した銭貨で、日本最初の貨幣『和同開珎』(最近は富本銭という説もある)を発行するとき、手本にしたといわれている貨幣です。
歯車状の側面を持ったコイン(Serrated coins)
2005/06/22
Serrated coins(直訳すると”鋸歯状のコイン”)という歯車状の側面を持ったコインがあります。よく目にするのはセレウコス朝シリアの銅貨で、セレウコス4世からアンティオコス6世の発行した、およそ50年間の銅貨に見られる特殊な形態です。 それではなぜこのような形をしているのでしょうか? 一説によりますと、当時の偽金作りが金銀の薄板を貼付け銅貨を金銀貨に作り替えるのを諦めさせるのが第一の目的だとありますが、はっきりしません。 写真はアンティオコス6世(145-142 BC.)の銅貨(AE21)です。
コイン刻印の素、インタリオ(陰刻)
2005/05/29
コインが発明される遥か前から印章としてのインタリオが存在し、個人や公の認証として封印等に使用されました。コインが発明されてすぐに、その品質を保証するものものとして刻印を押すようになります。その発想や技術的裏付けはインタリオにあると考えるのが自然だと思います。写真のサンプルは時代が下ってローマ時代のリングに装着されたインタリオですが、キューピッドがレスリング遊びに興じている情景を表したもので愛らしいものです。
セロリから名前をもらったセリナス(セリノンティオン)
2005/04/1
メガラ(コリント地峡の都市国家)の植民市として紀元前650年頃シチリア島の西部に建設されたセリナス(ΣΕΛΙΝΟΝΤΙΟΝ:セリノンティオン)の名前は、その地域に繁茂していた野生のセロリに由来しているといいます。 なおとても日本的な芹はセリ科ですが、セロリもセリ科であり、芹とセリナスの名前に関する類似性は何らかの関係を感じさせます。ザクロが原産地のイラン・ザクロス山脈に由来する事を考えると、必ずしも関係ないとは言い切れない気がします。
カウンターマーク(加刻印)見本市
2005/03/12
アスペンダスのドラクマ銀貨に見られるカウンターマーク(加刻印)は、綺麗に並んで数多くが打たれているのでまるでカウンターマークの見本市のようです。 カウンターマークには色々な用例がありますが、このコインの場合は両替商が真贋を見極めた証に刻印を押したものでしょうか? それにしてもこんなに多く打たなければならなかったのはどんな理由だったのでしょうか。 一人より二人、二人より三人‥‥八人も検査した?とは念がいっています。
辺境地マケドニアの熱意
2005/02/01
この小さなジオボル銀貨(11mm)はマケドニアのアルケラオス(413-399B.C.)が作らせたものですが、獲物の肉を貪り食う狼(或いは猟犬)が見事に表されています。 当時ギリシャから見れば辺境野地であったマケドニアは、ギリシャ文化に憧れ文化人・芸術家を招き熱心に中央の文物を導入し、中央に追い付こうとしました。 このコインにもその成果の一端が見て取れます。 そしておよそ40年後、フィリッポス2世(359-336B.C.)の時代になって、その熱意が大きく花開くことになります。
タラスの特別なコイン2
2005/01/20
2004/01で説明しましたタラスの銀貨は競馬競技の優勝者がゴールをした瞬間を表していると思われますが、このコインはそれと対を成すのではないかと思われるもので、レース前の情景を表現しているようです。 騎手は馬のたてがみを撫ではやる気持ちを落ち着かせています、また介添え人と思われる人物が蹄に溜った泥を取り除き発走の準備をしているようです。 このコインも通常のタラスのコインとは異なり特別な何かを感じさせます。(比較の為ゴールの瞬間を表したと思われるコインを再掲載しておきます)
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