―トピックス(2006)―

月いちのペースで小さな話題を掲載します。


アイギス(イージス)2  2006/12/30
5月に紹介した、ゼウス所有のアイギスと呼ばれるマント(または盾)を正面から見るとこんな感じになります。 またディオドトスのテトラドラクマ貨に表わされているアイギスを見ると突き出した腕から垂れ下がり、盾といっても通常イメージされる堅いものではなく、柔軟な素材であることが見て取れます。 柔よく剛を制すではないですが、必ずしも堅く強く思える物が最強の物ではないことを教えているのかも知れません。しかし選りに選って、何故山羊の革でなくてはならないのかは、よく分かりません。



タラスの特別なコイン3  2006/11/24
2004/01と2005/01で取り上げましたタラスの銀貨ですが、このコイン(真ん中)はそれと対を成すものではないと思いますが、レースで疾走中の情景を表現しているようです。 コインは打刻時に滑って放射状の跡がついていますが、この場合はかえってスピード感が表せているようにもみえます。いかがでしょうか (;^_^A  この時代ではまだ鞍や鐙が発明されていなかったので、騎乗スタイルは後傾になっているのが見て取れます。



現代通貨に見る古代ギリシャコインの意匠(2)  2006/10/04
ギリシャがユーロ圏に加盟した現在も、自国のシンボルとしてアテネの銀貨を採用しています。 左のコインはギリシャ共和国発行(2002)の1ユーロコイン、右のコインは古代アテネのテトラドラクマ銀貨です。 やっぱりアテネのテトラドラクマ銀貨はギリシャのシンボルですね。


戦象  2006/09/23
古代世界における戦の記述には、たびたび戦象が現れます。 有名なところでは、アレクサンドロス大王の東征でペルシャ軍が用いた例や、ハンニバルのアルプス越えに従軍した例などがあります。 このセレウコス1世の銀貨に表されている戦象はマウリア朝インドのサンドラコットス(チャンドラグプタ)との和約で、パンジャブ地方を割譲する見返りに得た500頭の象であろうと思われます。 広大な土地と交換するくらい大変な兵器、現代の重戦車にも相当するもので、その後セレウコス朝の重要な戦力となったようです。


現代通貨に見る古代ギリシャコインの意匠(1)  2006/08/20
現代ギリシャの通貨には多くの古代ギリシャコインの意匠(デザイン)が見られます。これは古代ギリシャコインが西洋コインの源泉と自認して、誇りに思っているからでしょう。 左のコインはギリシャ王国(1912)の10レプタコイン、右のコインは古代ギリシャ(ローマ治世下)のテトラドラクマ銀貨です。


騎兵  2006/07/21
古代ギリシアの騎兵は、高価な馬を調達できる貴族や極めて富裕な者達しかなることができませんでした。これは重装歩兵が武具を自前で用意しなければならなかったので富裕層に限られたのと同様です。 当時の乗馬は鐙(あぶみ)がまだ無く、馬の操縦にはかなりの熟練が必要だったはずで、その意味でも乗馬の訓練を受けられる環境にあった者達に限られていたといえるでしょう。 このコインはシラクサのヒエロン2世(紀元前275〜215年)のAE27銅貨ですが、騎士のモデルがヒエロン2世自身かどうかは不明です。


重装歩兵(ホプリテス)  2006/06/28
古代ギリシャの重装歩兵は富裕層で構成されていました。それは鎧兜や盾、槍といった高価な武具を自分で用意しなければならなかったからだといいます。 重装歩兵の姿は当時のコインでも伺うことができます。 左の例は小アジアのアスペンダス(紀元前450年頃)のステーター銀貨、右はシチリア島のメッサーナ(紀元前200年頃)のペントンキオン銅貨で、いずれも重装という呼び名に反して鎧や脛当ては身につけていません。これは鍛えられた肉体を鎧で隠すこと無く表現した為と思われます。さしずめミスターギリシャといった趣でしょうか。


秘密兵器?アイギス(イージス)  2006/05/29
プトレマイオス1世が発行した象の頭皮を被ったタイプのコインと、デメトリオス・ポリオルケテスの肖像コインの特別のタイプに見られる、首に巻かれているものは何でしょうか。 象の頭皮の延長というには、ちょっと異質な感じを受けます。 カタログによればゼウスの所有する(平素は彼の娘アテネ着用する)アイギスと呼ばれるマント(または盾)で、それは恐怖と恐れを表現したといわれています。そしてそれを振りまわす時、敵を吹き飛ばす秘密兵器のようです。 ギリシア芸術では(おそらくヤギ革の)短いマントとして描写されます。 盾の場合は、中央にゴルゴンの正面像が飾られます。 現代ではイージス艦で有名な、アメリカが開発したイージスシステムにその名前を残しています。



アレクサンドロスタイプ・4Dr銀貨:アンティオコス銘  2006/04/10
アレクサンドロスタイプのテトラドラクマ銀貨には、セレウコス朝のアンティオコス(ANTIOXOY)銘のものも存在します。一説によるとアンティオコスが父セレウコス1世と共同統治の際に発行したコインであるということですが、シービーのカタログでは継承後の単独統治時代のものとしています。当然のことながら当時の鋳造記録など存在しないので、詳細は分かりませんが希少なコインにはちがいありません。


アレクサンドロスタイプ・4Dr銀貨:リュシマコス銘  2006/03/18
トラキア王国のリュシマコスは、有名なアレクサンドロス肖像タイプのコインを発行しますが、それ以前はアレクサンドロスタイプコイン(アレクサンドロス銘)を発行していました。またデザインはそのままに裏面の銘文を自身のリュシマコス(ΛYΣIMAXOY)と刻んだコインも発行しています。後のタイプへの移行期なのか、あるいは他の理由による物なのかは不明です。 表面のヘラクレスのタイプもいくつかにありますが、このタイプは(決してハンサムではありませんが)特徴があるので表面を見ただけでそれと分かります。


小説「汝盗むなかれ」とデマレシオン  2006/02/21
先日、赤澤さんから教えていただいた小説「汝盗むなかれ」を古書店から購入し(絶版のようです)読んでみました。最近は推理小説を読んでいなかったのですが、さすが有名なベストセラー作家ということでコインがモチーフでなくても面白く読めたと思いますが、そこに古代コインという調味料が掛かっていたので、とても楽しく読めました。  小説に登場するシラクサのデカドラクマ銀貨”デマレシオン”とはどんなコインだろうかと、さっそくいつものシービーカタログで調べてみたら、アルカイックタイプの有名なコインでした。よく見ると説明にデマレシオンの名前と由来が書かれていました。英語だとよく読まないで流しているのが判明してしまいました。それにしても(小説の中の話ですが)たった1枚のコインのエスティメイトが35万$(41,489,000円)とは、、、もうびっくりです (〇o〇;) アウアウ

デマレシオンのイメージはシービーカタログからお借りしました。


トリトンとファロスの灯台  2006/01/14
425-406B.C.頃シチリア島のアクラガスで発行されたヘミリトロン銅貨の裏面には通常 蟹がメインで傍役として蛸、巻貝、海老等が表されます。しかしこのコインには珍しいことにトリトンが登場します。手で法螺貝を捧げ持ち吹き鳴らそうとしています。記憶によればファロスの灯台の装飾?として掲げられたトリトン像にそっくりです(後年ローマ時代にアレクサンドリアで発行された銅貨のデザイン)。 この灯台は250B.C.頃に建築されたので、アクラガス・コインの方が先ですが、形が見事に一致しています。きっとこれがトリトン像の典型なのでしょう。 因みにトリトンはポセイドンの息子で、同じく海神とされます。




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