―トピックス(2004)―

月いちのペースで小さな話題を掲載します。


発掘時のコインはどんな状態?  2004/12/12
発掘したままの古代ギリシャのコインはどんなものか御存じない方がほとんどかと思います。ふだん目にするものは錆が落とされ綺麗になった後のもので、深いトーンがのっているものは洗浄後に再度古色が時間を掛けて着いていったものです。 エーこんなにバッチイの\(◎o◎)/とお思いになるかもしれませんが、何しろ2000年以上の垢(錆)が着いているのですから当たり前ですね。



例外的製造法(初期コイン)  2004/11/8
初期古代ギリシャコインの特徴は、日本の豆板銀のようなコロンとした形状です。そしてそれ以降アルカイック期→クラシック期→ヘレニズム期とだんだん厚さを減らし相対的に径が大きくなっていくという公式があります。 しかしコイン発生初期にイタリアの各都市で、この公式によらないユニークな製造方法で作られた一群があります。 それは平金を薄く延ばし、それを表裏同じデザインの凹/凸刻印を組み合わせて作成するもので、ほとんどが希少なコインです。 シバリスの他にはメタポンティオン(麦の穂)/ポセイドニア(ポセイドン)/カウロニア(アポロ)/クロトン(トリポッド)があります。



銅貨の平金 1(鋳造による円錐台型の例)  2004/10/15
5月にシラクサにおける平金の例を紹介しましたが、銅貨の一部にも特徴的な平金があります。 カルタゴ、アクラガス、エジプト、シリアなどの銅貨の多くに円錐台型をした物がありますが、これらの平金は鋳造によるもので、型抜けを良くするため側面に大きなテーパーが付けられ、結果的に円錐台型になっています。鋳造だった証拠に湯口の痕跡が見てとれます。又湯口は両側についている例がありますので連続した型もある事をうかがわせます。 このように東洋の貨幣製造と同じ方法でしたが、型に直接模様を彫り込まず最終的に打刻により仕上げた理由は不明です。単に考えつかなかっただけかも( ̄▽ ̄;)ハハ



他人の空似(メアンダー文様とラーメンマーク)  2004/09/12
ギリシャの代表的な文様として、直線で構成された渦巻形があります。これをメアンダー文様といいますが、なぜか中華文様にも瓜二つの文様があり雷文といいます。そうラーメンの丼についている、いわゆるラーメンマークですね。 発生時期は双方とも紀元前数百年頃と思われますが、単なる他人の空似でギリシャのそれは小アジアのミレトスを流れている極端に蛇行しているメンデレス川に由来し(これが英語読みになりメアンダーとなる)中国のそれは雷の稲光りに由来しているので名前も雷文となっています。



ギリシャ発行のオリンピック関連の切手に見る資料  2004/08/27
今回はアテネオリンピック期間中でもありますのでちょっと趣向を変えて、ギリシャで発行されたオリンピック関連の切手のうち、古代オリンピックに関するデザインが表されているものを見てみましょう。




古代コインの裏・表  2004/07/13
コインの表裏はどう決まっているのでしょうか。日本の現代コインでは便宜上年号表示のある方を裏としているようですが、古代ギリシャのコインではどのように決まっているのでしょうか。 製造当時の決まりは記録が残っていませんので分かりませんが(というか表裏の認識なんか無かった?)現在はある法則によって決めているようです。 それはコインの意匠ではなく、製造上の打刻面を裏とすることです。 ですから意匠を中心に見ますと表裏を取り違えてしまうことがあります。 打刻面は平地部分が表面の刻印に比べ凸状に彎曲していることが多いので判別できます。



ハイレリーフ(深彫)について  2004/06/07
ヘレニズム期のコインには稀にハイレリーフ(深彫)に作られたコインがあり、ほとんどの場合デザインも優秀で通常のコインに比べ見ごたえがあり珍重されます。 さらに単にハイレリーフであるばかりでなくコインの径が大きいことも、価値が高くなる要素となります。
しかしハイレリーフといっても実際には厚さで約1mmの差しかなく、ほんの一彫の差が芸術性を高めていると言えるかもしれません。 でも製造者からすると作りにくいので嫌がられたかもしれませんが、、、



シラクサの古代コインと火縄銃の弾  2004/05/12
シラクサで作られた銀貨の地金(平金)はコインの形状から推察すると、火縄銃の弾丸の製造方法と同じではないかと思われます。 コインの側面に残る突起状の跡は左右に割れる型から作られたことを伺わせます。古代であるにも関わらずコイン重量の誤差が少ないのは、定量化できる型がそれを可能にしているからでしょう。



現代まで影響を与え続ける古代ギリシャのデザイン  2004/04/05
古代ローマから現代まで古代ギリシャ美術に憧れを抱く気持ちは連綿と続いています。 ローマ人はギリシャを征服し属国としますが、文化的には畏敬の念を持ち、皮肉にもギリシャの美術品はローマにより収奪の憂き目にあいます。 中世の暗黒期を過ぎ、16世紀ルネッサンスを迎え古代ギリシャへの回帰がおこると、絵画や彫刻にも形を変えて復活します。 近代の英雄ナポレオンも古代ギリシャ美術には憧れを抱いていたようで、メダルにその傾倒ぶりが表れています。 近代コインは携帯性や生産性の制約があるため、古代コインと比較はできませんが、技術的な継承は制約の少ないメダルにあるのではないかと考えています。



同じ刻印から生まれた2つのコイン:弱打(ソフトストライク)について  2004/03/20
1月に掲載したタラスのジドラクマ(ノモス)銀貨と同刻印のコインが最近、某コインオークションに登場していました。一見すると異なる刻印に見える2枚ですが、騎手の足の部分や介添え人の足の側の部分にある刻印の傷が一致することから、兄弟のコインであることが分かります。 なぜ同じ刻印の物に見えないのか?それは打刻の違いにあります。 一方は深く正しく打刻されているのに対し、もう一方は(材料の加熱不足か打刻の圧力不足により)弱打の状態で、細部が現われず異なった印象を受けます。 同じコインでも状態の違いにより評価が格段に違ってしまうのも納得させられる良い例だと思います。



歴史から消えた幼年王  2004/02/11
セレウコス朝の大臣ヘリオドロスはセレウコス4世を謀殺し、亡き王の遺児アンティオコス(五才)を自分が摂政となるため確保しました。 しかしながら先王の弟がシリアに侵攻しアンティオコス4世として王位を継いでしまいました。 そのため彼の若い甥は実体のない数年間の共同統治の後、幼い肖像を刻んだ少数のコインを残して歴史から姿を消す運命となりました。



彫刻家のこだわり  2004/01/14
南イタリアの最も重要な都市、カラブリア地方のタラス(タレンツム)で発行されたジドラクマ(ノモス)銀貨の基本的意匠は、表面:馬上の青年/裏面:いるかに乗る神・タラスですが、このコインは彫刻家のこだわりか?とても凝ったデザインになっています。
馬上の青年のバリエーションは通常、槍を構えたり月桂冠をかざす程度ですが、このコインは競馬競技の優勝者がゴールをした瞬間を表していると思われます。 馬上の青年は女神ニケから月桂冠を授けられているので競技に優勝したことが分かります。また介添えと思われる人物が興奮覚めやらぬ馬をなだめていることから、ゴールの瞬間を表していると思われます。




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