―掲示板/談話室(2003年分その2)―
古代コインに関する、情報提供/疑問/質問/雑談/近況報告なんでも結構ですのでお便りをお寄せください。
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【素朴な質問】犬飼裕一 03/8/18
以前から貴ホームページを拝見しておりました。 美的なセンスと、教育的な配慮と探究心が見事に調和していますね。もちろんため息も出ます。偉そうなことを申しましたが、大変に勉強させていただきました。 つきましては、しばらく以前からぜひお尋ねしたいギリシアコイン全般についての質問をさせてください。「古代コインはどう作られたか」の項に関連して、ギリシアの古典期のコインと、ローマのコインの外見があまりにも違いますね。 ローマのコインは今日のコインと、基本的に同じ形で「コインの形」をしています。 逆に、今日の世界中の人々がローマの作ったフォーマットにしたがっているというのが正しいのでしょう。これに対して古典期以前のギリシアのコインというのは、「小石型」というのか、もっと立体的ですね。少なくともわれわれのように平たい丸い物体を積み重ねるという発想はなかったのでしょう。それでお尋ねしたいのは、古典期のギリシアのコインというのもやはり打刻だけで作られていたのでしょうか。 そうだとすると、すごい技術ですね。たとえばアテネのフクロウなどは、「浮き彫り」というのを超えているようなところがあります。最初におおまかな刻印をして、後から仕上げ彫りをするといった工程はなかったのでしょうか。 これに比べると帝政以後のローマのコインというのは、どこからみてもプレス製品ですね。古典ギリシアに比べて、なにやら退化した感じすらします。
【お尋ねの件ですが、】管理人 03/8/18
ホームページにアクセス有難うございます。 お尋ねの件ですが、古代ローマコインの質はその規模に関係があるかも知れません、一般的な銀貨を比べるとギリシャは個々のポリスが独自のコインを製造していたのに対し、ローマは小額のデナリウスを標準通貨としていたので、製造規模が非常に多くなり粗製濫造に陥ったのではないでしょうか。
けれど同じローマでも金貨は特別だったようで、刻印も銀銅貨とは比べ物にならないほどの入念ですばらしい物です(私も写真でしか見ていませんが、さぞかし名のあるマイスターが作ったのではないか、との感を受けます)。コインのベースとなる平金は「アルカイック期〜古典期」迄は「小石型」ですが、「古典期後期頃」から打刻の前に平らに押しつぶして「円盤状」にした物が現れてきます(まさに平金です)、「ヘレニズム期」を過ぎるとより薄く相対的に径は大きくなっていきます。ローマもその流れの上にあると思います。 製造的にいえば現代に直接繋がるのは近代になりプレスが機械式になってからと私は考えています。(その途中にササン朝ペルシャ式の「極薄形」がビザンティン〜中世まで連綿と作られたと考えます)
さて古代ギリシアのコインは打刻だけで作られ、打刻の後は何の処理もされていません。コインのデザインが繊細で鮮明なのは製造方法に秘密があります。平金をそのまま打刻しますと刻印が負けてしまうので、事前に平金を熱して柔らかくしておき、そこで打刻をします(今風にいえば熱鍛造でしょうか)。それでもプレスが足りない時(深彫の刻印の場合など)は数度打刻します。(その時ずれると2重打ちの現象が起きます)また数を作っていきますと刻印も磨耗しますし、錆びて腐食する場合もありますので、刻印の製作直後と廃棄直前ではまるで違うものになります。その意味で鮮明なものは貴重であるといえるでしょう。
【すごい技術ですね】犬飼裕一 03/8/18
早々にご丁寧なご返事・ご説明を有難うございます。 繰り返しになりますが、打刻だけで作られたとすると、ギリシアコインの名品というのはすごい技術ですね。そしてギリシアとローマというのが、ずいぶんと違うことに気づきます。今日の常識では、両方とも「古代」ということでいっしょくたにされて、しかも「古代」というと、素朴な手作りということになります。ところが、ローマの場合は工業のようなものがかなり出来上がっていて、意外なほど規格化された製品が各地で共有されていたようです(手工業ですから、手作りなのにはちがいありませんが)。「ローマの遺跡」というと、南フランスでもトルコでも北アフリカでも、同じような意匠の建物が建っていて(要するに銀行建築の兄貴分)、そこに使う石柱やレンガの規格も決まっていて、水運で各地が同じ物を融通しあっていたようです。地中海各地で遺跡から山のように出てくる同じ形のオイルランプ(発掘品が数ドルで買えます!)のように、生活に使う日用品も相当規格化されていたようですから、ローマコインの「退化」ばかりをなじる必要はないのかもしれませんね。
ローマのランプのeBayオークション
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=2551409884&category=37907
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=2550529246&category=37907
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=2551224032&category=37907
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=2551347562&category=355
http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=2552272457&category=37907
【また宜しくお願いいたします】管理人 03/8/19
貴重な情報を有難うございました。またなにかありましたらお便りください。 宜しくお願いいたします。
【アレクサンドロス大王と東西文明の交流展】管理人 03/9/4
過日思い立ってアレクサンドロス大王と東西文明の交流展を見学してきました。
東博は久しぶりで平成館には初めて入館しました。内装はともかく外観はあまりいただけない。 展覧会はアレクサンドロス大王が自らヘラクレスの化身としたことから、ヘラクレスを軸にヘレニズムの文物がどのように伝播していったかを展示説明しています。 興味の対象はやはりアレクサンドロスの肖像とコインの実物でしたが、大王の胸像(ルーブル美術館蔵)はローマ時代の模刻で、そのうえ破損部がだいぶ後補されているので、想像していた程の感動はありませんでした。コインも拡大写真のパネルがメインで、実物は展示位置と照明に難がありよく観賞できませんでした。拡大写真はカタログを見ればすむことなので、展示では実物を中心にしてほしかった。 そんな中、オインピアスの金メダル(テッサロニケ考古学博物館蔵)は見ごたえがあり目の保養をさせていただいた。 その他では小像ながらメルクリウス神像/ササン朝のシャープール3世豹狩図の皿等が個人的には気に入りました。
お隣の東京都美術館で開催中のトルコ三大文明展(こちらにもアレクサンドロスの頭部が展示されている)も一緒に見ようと思いましたが、疲労と時間切れのため断念。 9/28まで開催しているので暇を見て観賞に行こうと思っています。
【おめでとう御座います】腕だる 03/9/4
御元気ですか? カウンター2万突破!!!!おめでとう御座います。
【有難うございます】管理人 03/9/4
いつもアクセス有難うございます。1年で10000アクセスはどうなんでしょうか。マニアックなサイトで1万は上出来?かな。
【なかなかのものだと思います】腕だる 03/9/5
年1万アクセスはなかなかのものだと思います。繁盛すれば良いという物ではありませんが、宣伝の仕方によっては更にアクセスは伸びると思っています。
小林様のHPにはギリシャコインについての全てがある上、現在進行形で内容が豊富になって行く凄さもあり一度発見すれば興味ある人にとっては周期的に訪れるサイトになると思います。私は仕事に疲れた時にもよく見ています。またカラープリンタに打ち出してファイリングし、本のようにして自宅に置いています。少し加筆すれば実際一冊の本になるなぁ..と思う時があります。 打ち出してみると相当膨大なページ数になりましたよ。
【今後とも宜しくお願いいたします。】管理人 03/9/5
不定期になりますが今後とも内容を充実させていきますのでまた宜しくお願いいたします。
【なぜ右を向いているのか】犬飼裕一 03/9/13
先日はポストカードをいただきまして有難うございました。 またまた素朴な質問をさせてください。
事の発端は手許にあるローマ時代のコインを眺めていて思いついた素朴な疑問なのです。それは、なぜローマの少なくともディナリウス銀貨の皇帝たちは、みんな右を向いているのかということです。もちろん例外はあって、私も左を向いているウェスパシアヌスのディナリウスを一点持っているのですが、それ以外は延々と右を向いているのですね。 それで
「古代ローマ」HP
の「店主」augustus様にこの旨をお尋ねしたところ、さっそくお答えがあり、ローマの場合は単に前例踏襲が続いただけで、深い理由はないのではないのかとのことでありました。ただし、ローマの場合はギリシアの影響を強く受けているので、ギリシアの「前例」が重要なのだろうとのことでした。そしてそのあたりはギリシアコインに詳しい人に尋ねてほしいといわれました。すると、やはり小林様にお尋ねするほかはないわけです。確かにギリシアのコインも右を向いていますよね。毎度コインの特定に利用させていただいていNemesisの在庫も、正面を向いている例が相当ある他は、おおむね右向きですね。面白のは動物も右を向いていることでず。つまらないことですが、不思議です。
【コインの肖像の向きは、、、】管理人 03/9/13
難問ですね〜。 首像に関してはアルカイック、クラシック期では、どちらかというと右向きが多いという程度ですが、ヘレニズム期では圧倒的に右向きが多くなりますね。(座像、立像に関してはこの傾向はありません)しかし、じっくりと観察すると、この傾向はマケドニア王国→ディアドコイの武将の王国が右向き首像を採用しているのに対し、シチリアの僭主ヒエロンやその妃フィリスティス、ヒエロニモスらの肖像は左向きであり、カルタゴやパルティア王国の肖像も左向きが主になっているということがあります。これらのことから、必ずしも右向ということに意味があるのではなく、augustusさんの考察のように単に前例に倣ったのでしょう。(地域毎で) ローマは距離的に近いシチリアやカルタゴではなく、ギリシャの正統性を尊重してマケドニア系王国のコインに倣ったということでしょうか。
【ギリシアの独創性】犬飼裕一 03/9/14
さっそくのご返事をありがとうございました。
ギリシア人が好き勝手に独創して、ローマ人がその一部を真似してあとは前例継承というのは、面白いですね。ギリシアのコインは高いのでなかなか入手できないのですが、インターネットで眺めているだけでもいろいろ考えていたことがわかります。もっとも新鮮なのは、Apollonia Pontikaのように正面を向いている像が登場することでしょうか。正面向きのコインというのは、ローマにも近代コインにも少ないですね。ただビザンチンのコインで比較的多いくらいでしょうか。ただしビザンチンの場合は全身像や半身像が多くなるようです。顔だけのアップで表現するには、必ず横顔でないと困るという伝統ができているのでしょう。
【質問させていただきます】Y. H 03/09/20
小林様、お久しぶりです。 ギリシャコインについては小林様のホームページだけが知識のもとで、greek coins and their valuesをアマゾンに申し込みはしたのですが待てど暮らせどこないし、当県にはそういった専門店は無いし、こういったことを聞けるのは小林様だけなので一つだけ質問させていただきたいのです。
実は友達にギリシャコインを見せると皆口をそろえて贋物じゃないのかといいます。小林様の商品についてはホームページの内容とか、メールで話されているほかの方々とのお話、またその方々の評価とかで全く疑ってはいないのですが、ただ色々のほかのコイン、例えばあまりにきれいにぴかぴかの銀色をした洗浄されたコインを見ると今でも作れるのではと思ってしまいます。あれから色々なお店に見に行ったりカタログを取り寄せたり外国のホームページを見たりするとはっきり言ってオークションの価格がやはり安いのであまり考えずに色々なものに手を出すのは危険なのでしょうか?それともあまり偽物というのは無いのでしょうか。あれから他でいくつか買ったので急に不安になっています。ご教授いただければと思い突然メールさせていただきました。よろしくお願いします。
【古代コインの真贋について】管理人 03/09/21
greek coins and their valuesは版元品切れで次回の重版待ちのようです。
私も注文中ですが現在のところ入荷の見込みはありません。
古代コインは高価なので、その真贋については皆さん興味があると思います。 初めに贋造コインを製法から考えてみますと大きく2つの方法が考えられます。
●1つ目は鋳写しで、オリジナルから型を取り複製を作ります。
鋳写しで作られたコピーを見分ける方法は2つあります。鋳写すと金属の性質から収縮が必ず起ります。そして古代ギリシャコインも秤量貨幣ですので、形が一定でなくとも重量は結構一定しているものです。これらのことからテトラドラクマでも標準的な重量より1g以上少ない物は疑う必要があります。
また製法上の特徴から型の合わせ目(パーティングライン)が必ず発生します。
これを隠そうと削ったり磨いたりしますが、その痕跡は必ず残ります。
ということで、コインの側面の観察が重要になります。
●2つ目は刻印を新たに作る方法です。
当然作者は古代のオリジナルに似せて作ろうとするのですが、どうしても現代的な匂いが残ってしまいます。しかし過去には贋作のマイスター?が存在し18〜19世紀に活躍したベッカーなどが居りすばらしい?偽物が存在します。しかしそれらも専門のカタログが存在し全て解明されています。
以上贋造コインの製造法と判定方法を述べましたが、一般の人が購入時にいちいちこれらを調べる訳にもいかないと思います。そこで重要になってくるのがディーラーの選択です。
古代コインに関して海外の大手ディーラーは日本と違い歴史と信用があり、信用を落すことを極端に嫌います。オークションなどでも、指摘があれば出品を取り止めます。(このあたり日本の、特に地方の穴銭関係中心のオークショナーは見習わなければならないと思います。)大手ディーラーを通すことにより代わりに判定をしてもらっているとも言えるでしょう。
よく言われることですが”物を買う時は人(店)を買え”は至言といえるでしょう。
◆良いコイン店とは(古代コインに関して)
・仕入れ先が大手優良ディーラーである。
・商品の情報を詳しく伝える姿勢がある。
・真贋の判定に於いては無条件で返金に応じる。
これらを実行しているところは良心的で信用できると思われます。
【古代コインを使ったアクセサリーについて】Y. Ogawa 03/12/24
初めてメールさせて頂きます。 先日、とあるデパートの古美術販売の催事で古代コインを使ったアクセサリーを販売していました。 その中で、とても気に入ったものがありました。 古代ギリシャ、ローマ、ヴィザンティン帝国の歴史が大好きなので、当時の人々が手にしていたコインには非常に興味があります。ただ古代コインに関しては全くの素人で相場等々も含めて知識が無く、こういうものを衝動買いすべきではないと判断しました。 そこでインターネットでいろいろ調べようと思い、御社のサイトを拝見したので質問してみようと思った次第です。
そのコインは”古代のマイナーコイン”のサイトに載っていました。デザインですが表面は人の顔が2つ上下の向きに彫ってあり、裏面はイルカを捕らえる鷲の絵です。解説によると「女性の顔が二つの珍しいデザイン、黒海西岸、イストラス、11.6mm、1.4g、1/4ドラクマ、BC.4C」とありました。
私が見た商品は指輪に加工してあり、裏面は金の台に隠されてしまっています。直径は11.6mmよりも、若干小さかったように思います。商品についていた英語の解説は次の通りです。時代:BC.340年頃の古代ギリシャ銀貨、その2つの顔のデザインは男性で”rising sun”と”sun set”を意味するとありました。
問題の値段ですが、22金で古代を意識したような雰囲気のシンプルな指輪の加工がしてあり、53万円でした。催事の最終日という事もあり43万円までなら下げられるとの事でした。デパート価格とはいえ、かなり高めな印象を受けました。 ただ担当者曰く今度イギリスに博物館が出来、殆どものはそこに収集されるようになるので、今後はこういう商品は手に入りにくくなる、との事でした。アクセサリーとして加工されているので古代コインとしての価値はあまり無いのかも知れませんが商品価値としてどう思われるか、お答え頂ければと思います。 以上、宜しくお願い致します。
【即断はできませんが、、、】管理人 03/12/25
お尋ねの件、実物または写真を見ていないので即断はできませんがカタログによれば£225(42000円)で状態/スタイルにもよりますが実勢価格も、ほぼその辺りだと思います。サイズが若干小さいとのことですが、あるいは鋳写しにより縮んだのかもしれません。
価値的には地金価値+αなので、53万は余りにも高いでしょう。金の相場は大雑把に1500/gとみてもせいぜい10万しないでしょう。30万〜40万も出せば結構良い本物の古代金貨が手に入ります。
なお”今度イギリスに博物館が出来、殆どのものはそこに収集されるようになるので、今後はこういう商品は手に入りにくくなる”というのはまったくの眉唾ものですのでご注意ください。本物をお求めであればやはり信用のあるところで購入されるのが一番だと思います。
【ありがとうございました】Y. Ogawa 03/12/26
ご返信ありがとうございました。 確かに高すぎますし、コインそのもののサイズが小さいという意味においても、複製の可能性も高いですよね。 ただこれを機会に以前よりもずっと興味を持ったので勉強したいと思いますし、気に入った良いものを一つでも手に入れたいと考えています。 またご相談させて頂く事もあると思いますので宜しくお願い致します。